ウインダウリ サクラ シラーズ[2020]
Windowrie Sakura Shiraz20
タイプ | 赤ワイン |
産地 | オーストラリア/ニュー サウス ウエールズ |
品種 | シラーズ |
容量 | 750ml |
[限定出荷]
熟したプラムや肉厚なベリー系果実に、樽由来のリッチなヴァニラの風味が感じられるクラシックな造りのシラーズです。ブドウは収量を抑え、またその中でも選りすぐられた一部のブドウのみを使用しています。発酵・熟成にはアメリカンオークを使用しています。タンニンは非常に滑らか、果実味だけではなく複雑味としっかりとした余韻を感じられる、上質な赤ワインに仕上がっています。
「何故、桜、Sakura Shirazなのか」
このウインダウリ・エステート社の桜ラベルにはニューサウスウェールズ州・カウラ地区の深い歴史と関わっています。1944年、第二次世界大戦中カウラの地で捕虜になっていた日本兵約1000人余りが大脱走を企て200名以上もの死者を出した事件がありました。カウラの人々は事件で命を落としてしまった日本兵を手厚く葬り、日本との友好関係を深めるために本格的な日本庭園や日本文化センターを作りました。さらには日本人墓地から日本庭園までの5kmの間に約2000本の桜を植え、毎年桜祭り(10月頃)が行われるようになったのです。国際理解を象徴する並木道としての桜。この桜をモチーフにしたのがウッドブロック・サクラ シラーズのラベルです。
~カウラの大脱走~
1944年8月5日、午前1時55分、シドニーの西約320キロに位置するカウラ戦争捕虜収容所で、1104人の日本人捕虜が一斉に蜂起、脱走を企てるという事件がありました。脱走当時、捕虜たちが手にしていたものは、野球のバット、そのへんで拾った木の棒、それに食事のときに配られたフォークやナイフなど。ほぼ丸腰に等しい、まさしく捨て身の脱走でした。自分たちのハット(捕虜の宿舎)にみずから火を放ち、「デテクルテキハ、ミナミナコロセ」の突撃ラッパに続いて総決起した彼らの胸中には、生きてこの地上に残る意思など最初からなかったのです。「生きるためではなく、死ぬための脱走。」― それこそが、カウラ事件という世界でも前例を見ない捕虜脱走事件の底に流れるテーマだったのかも知れません。カウラ事件を考えるとき、一種の呪文のように繰り返される言葉に「生きて虜囚の辱めを受けず」というものがあります。これは、A級戦犯として戦後絞首刑にされた陸軍大将・東条英機が唱えた「戦陣訓」の一説で、その意味するところは、捕虜になることはこの上もない恥辱だから、敵につかまるぐらいなら自決しろという、大変厳しいものです。戦後世代には到底理解できないムチャクチャな教えですが、戦時教育を受けた日本軍人にとって、この言葉の持つ神通力と拘束力は、ほとんどカルト宗教と言っても良いほど強固なものだったようです。カウラ収容所の日本人捕虜たちは、三度三度の美味しい食事を与えられ、強制労働が課せられることもなく、それどころか学芸会や相撲大会、野球の試合などリクレーションの時間さえふんだんに与えられていました。病気になれば即刻治療してもらえるという待遇を与えられていながら、捕虜という身分から脱走したい一心から、彼らは大脱走を実行したのです。暴動の結果は、日本側の死者231人、負傷者108人、成功者ゼロ。オーストラリア側の死者4人。史上最大の捕虜脱走事件は、オーストラリアと日本の両国政府によって長く隠蔽され続け、事件が公式に語られるようになったのは、事件から40年も経った1984年のことでした。そしてこの事件の裏側には、日本人のメンタリティーを考える上で最も本質的な何かが潜んでいるように思えてならないのです。